2001.6.1
 

今月から2回に分けて、「チタンフレーム」についてお話しします。 チタニウム_元素記号Ti、元素番号22。ご存知の方も多いとは思いますが、ギリシャ神話の巨人タイタンにちなんだ名称ですね。地核中に多量 に存在する元素で、ほぼ全ての金属との相性が良いこと。強度があり、耐食性に強いことから、用途が広い金属です。チタンフレームの登場は今から20年程前、超軽量 のメガネフレームとして脚光を浴びた時期がありました。そのまま進化を遂げるかと思われたのですが、メッキや接合の難しさが災いしました。また、近年、フレームのスタイルが小さくなり、当然のごとく、小さいフレームならそれ自体が合金でも充分軽いために、チタンフレームを望む声は少なかったのです。でも、ここ数年のメッキやロー付け(接合)の技術革新はめざましく、こんにち日本のチタン加工技術は世界でもトップレベルにあります。

そこで今回は「組み立て、ロー付け(接合)」を中心に、チタンフレームの加工に関わるお話しをさせて頂きます。少し専門的な言葉もありますが、最後まで読んでください。説明にあたって、福井県鯖江市の加工工場「アイビス高島」にお世話になりました。取材を快くお引き受け頂きありがとうございました。「アイビス高島」では、様々な部品を加工して、フレームに組立てるまでの作業をおこなっています。
では、順を追って説明しましょう。
チタン部品の加工
フレームの組み立て工程は、チタンの各部品を削ることから始まります。部品は大きく分けて、テンプル、フロント、リム、ブリッジ、クリングス、そしてよろい(テンプルとフロントをつなぐジョイント部品)。写 真_aはよろいの加工前のもの、左右対象によろいがあるのが解りますか?この真中の溝部分を削って、2つのよろいが仕上ります。そう、メガネの部品はこうして必ず1ペアになっているものがあります。 各部品ごとの加工は、1工程で1〜3の作業がおこなわれます。例えば、1枚ゴマ(テンプルの先に付いているネジで止める輪の部分)であれば、1.プレスする 2.ドリルで真円をつくる 3.合い口を落とす、という具合です。 写真_bはテンプルの削り出し作業をおこなっているところです。
右フレーム:DU2003 ブルーマット
スポットロー付け
削り加工を経た各部品を組立てる工程のひとつがスポットロー付けです。少し解り辛いのですが、写 真_cがブリッジの接合、写真_dがクリングスの接合です。各部品の接合箇所にあらかじめ手作業で銀ロー(1mm四方板状の薄いもの)を張り付け、電熱で接合します。 この銀ローには溶点の違う様々なものがあります。最近では活性化ニッケルメッキをつけることによって、通 常の洋箔と同様に720度での低温ロー付けが可能になりました。
左フレーム:OD/HY-102 アンティークバイオレット
 

砂打ち加工
砂打ちは、フレームに砂を吹き付けて、艶を消し、チタンの表面をマット仕上にする加工です。両手でフレームを操作しながら、真上から吹き付けられる砂(小麦粉のように、とても細かい)で表面 を加工していきます。 写真_e
右フレーム:TY-47 ライトグレー/グリーン
レーザー加工
プレスやドリルでは対応できない細いフレームはレーザーを照射して、名入れや模様を付けていきます。写 真は固定したテンプルに真上からレーザーを照射しているところです。もちろん、線や模様はコンピュータ制御による自動照射です。 写真_f
 
フレームができあがるまでには、多くの職人が手をかけ、小さな部品を丹念に組立てねばなりません。その工程、作業はまさにマニュファクチャー(家内制手工業)です。今まで、気に留めなかった小さな部品一つひとつに、様々な人たちの創意工夫が込められていることが少しでもご理解いただけたでしょうか。
 
 
 
 
フレームをみるとき、どうしてもデザインや色に目がいってしまいがちですが、フレームの各パーツに注目してみることで、フレーム選びの幅が拡がるかもしれませんね。 さて、次回は組み立てが終了したチタンフレームを研き上げ、メッキを施す工程、そして最終仕上までのお話をする予定です。お楽しみに。