「小学校5年生のある日、黒板が何故かよく見えない、見づらいことに気がついたんです。」「その数日後、たまたま健康診断があって、で、視力を測ったら、片眼が0.5だった。それまで、2.0だとばかり思っていましたから、少し驚きましたね。」でも、すぐメガネをかける気にはなれなかったようだ。「僕はいまでは、腕時計をしません。小さい頃から、身体にモノをつけることにひどく抵抗があった結果です。」しかし、なにを思ったか、コンタクトを試したのだ。ところが、予想通り、これが全然ダメ。驚異的な異物感でじっとしていられない。「仕方ない。いよいよ、メガネをかけることになった訳です。確か、僕が28歳の時です。」
'81パリコレの仕事に従事していた頃、パリの街で見かけたアンティークのフレームに興味を持った。そして、「ロンドンで観た映画がヒント、きっかけになって、黒ブチを掛けるようになったんです。」当時のお堅いサラリーマン風で、いかにも杓子定規な仕事をしている奴に見えた。また、ジェームズ・ボンド、007じゃないけど、スパイがアタッシュケースから、変装用にかけるメガネはほとんどが黒ブチだった。「変装? 自分でなくなる。そうか!メガネで自分を変える、見え方を変えることができるんだ。」と思った。しばらくして、スネークマンショーが始まり、いろんな取材を受けるようになった。「私は誰?」「客観的に自分を見るって言うか、どう見せるかって言うか、いっそのこと想像の人間になっちまえ、みたいな気分でね。」
黒ブチが茂一さんのトレードマークになった。言うなれば、桑原茂一のキャラクターを端的に表現する、茂一さんの部分になった。この後、茂一さんはロイドを訪れる。 |