Mr.Loyd ABE's New Features 6th. メガネをつくる-三瓶哲男
三瓶氏との出会いからの思い出や、三瓶氏とメガネの話をエッセイ風にまとめました。
 

僕にとって、三瓶氏はただただ一途な男。いまも「つくる人でありつづけたい」と語る言葉に、彼の言い知れぬ思いを受けとめながら、僕は彼との出合いを思い出した。ひとつの価値をつくり出した者なら、きっと忘れることはない始まり。あらゆる事柄が軽く、そして速くなっていった'80年代後半。'67年〜'70年のカウンターカルチャーにも似た、新たなムーブメントが既に始まっていたのかもしれない。ずしりと感じる(感じたい)人のメッセージをときに必要としているように。そして、ある朝、彼は店の前にいた。それは僕にとっても、忘れられない出来事だった。


ロイドは現在の店鋪になる以前、数メートル手前にあった(現在のAERO POSTALE)。ある朝、店の前で、立っている大柄な男がいる。誰だろうと考える間もなく、待ってましたとばかりに彼は、「僕の手作りメガネをロイドに置いてもらえませんか?」そう言うと、ケースから何本かのフレームを社長の並木と僕の目の前に差し出した。
イラスト
1985年開店当初の opticien Loyd

「えっ!」
「なに?」
「僕のメガネをロイドに置かせてください、お願いします」
この言葉から、僕と三瓶氏の時間が始まった。15年前のことだ。
「'85〜'86年、ロイドをオープンして、1年足らずの頃でしたね」
「必死でした、滅茶苦茶だったかもしれません」
三瓶氏は自分の手作りメガネを行商していたのだ。僕は予期せぬ出来事に驚き、同時に、「この男は一体、何を考えているのだろう?」と思わずにはいられなかった。しかも、目は真っ赤に充血している。でも、この時すでに僕は彼の熱意に感激していたのかもしれない。考えを整理しながら、ジッとしている僕の傍で、並木は「さあ、どうぞ」と、三瓶氏を店の中へ招いていた。
並木はフレームを1本づつ丁寧に手にとって、「ご自分の手で削ったんですね」「よく解ります」と、ことの事態をハッキリと認識するように、そしてメガネと三瓶氏に思いやりを込めて応えている。
三瓶氏は当時、DCブランドなどのプロトタイプ作り、例えば展示会用サンプル製作に従事していた。
「2〜3ヶ月の間、ふとんで寝ていない時期がありました」「とにかく忙しかった」「でも、メガネは作り続けていました。手作りと、職人さんと共に作ったフレームを一人で売りに出掛けました」
その日は並木と共に、三瓶氏に助言をして別れたように思う。


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